産業廃棄ガス用塩ビ製洗浄塔(スクラバー)|施工手順と保守ポイント

 

 

酸に強い塩ビ製排ガス洗浄塔の制作手順と施工ポイント

排ガス洗浄塔(スクラバー)は、工場や化学プラントなどから発生する有害な排ガスを効率的に除去する大気汚染防止装置です。特に塩化水素や硫黄酸化物などの酸性ガスに対して耐性のある塩ビ(PVC)製の洗浄塔は、耐薬品性・施工性・コスト面で優れています。本記事では、酸に強い塩ビ製排ガス洗浄塔の特徴、制作手順、施工ポイント、実務施工例まで詳しく解説します。

完成イメージ(排ガス洗浄塔)
完成イメージ(排ガス洗浄塔)

1. 塩ビ製排ガス洗浄塔の特徴とメリット

  • 耐薬品性:酸性・アルカリ性の排ガスでも腐食に強く、長期間使用可能。
  • 軽量で加工しやすい:FRPや金属より施工が容易で、現場での切断・溶接も可能。
  • コスト効率:材料費が安価で維持管理も簡単。
  • 安全性:火花が発生しにくく、化学プラントでの安全性に貢献。

2. 排ガス洗浄塔の主な目的

  • 有害物質の除去:排ガスに含まれる酸性ガスや有毒ガス(塩化水素、硫黄酸化物など)を中和・除去。
  • 粉塵・ばいじんの除去:排ガス中の微粒子を効率的に取り除く。
  • 臭気対策:悪臭ガスの発生源から排出される臭気を抑制。

3. 排ガス洗浄塔の仕組み

  • 排ガスの吸引:発生源の工場などから排ガスを吸引。
  • 洗浄液との接触:塔内で、排ガスは水やアルカリ水溶液、苛性ソーダなどの薬液をシャワー状に噴射するノズルと接触。
  • 吸収・中和反応:有害ガスが洗浄液に溶け込み、化学的に中和・除去。
  • ミスト分離:洗浄後のガスに含まれる液滴(ミスト)はミストセパレーターで分離。
  • 清浄な排ガスの放出:有害物質が除去された清浄ガスを大気中に排出。

4. 塩ビ製洗浄塔の制作手順

手順1:設計と材料選定

排ガス量、塔高さ、薬品の種類に応じて寸法を決定。PVC板やパイプ、フランジなどの材料を選定します。

手順2:部材加工

塩ビ板やパイプを精密にカット。隙間を減らすことで溶接や接着が容易になります。

手順3:塩ビ溶接・接着(難しいポイント)

PVC専用溶剤で接着、または塩ビ溶接で強度を確保します。施工上の難しいポイントは以下の通りです:

  • 接合面の平滑性:表面が粗いと溶剤が浸透せず、接着不良の原因になる。
  • 温度・湿度管理:低温や高湿度では接着剤や溶接液の硬化が不均一になる。
  • 隙間や気泡の発生:接合面に空気が残ると強度低下や液漏れにつながる。
  • 大型部材の固定:重力でずれると溶接不良になるため、仮止めやクランプが必須。
  • 耐薬品性確認:接着剤が排ガスの酸性度に耐えられるかを事前確認。
※PVC溶接・接着は技術的に難しいため、小型部材でテスト施工を行い、条件を確認することを推奨。

手順4:パッキング材の設置

パッキング材は塔内部でガスと液体の接触効率を高める充填材です。形状や材質により吸収効率が変わります。PVC製リング型や蜂の巣型、散乱ボール型が一般的です。排ガス処理効率向上には適切な密度・配置が重要です。

手順5:パッキン材の設置

パッキン材はフランジや蓋、配管接続部などの接合部を密閉するための部材です。EPDMやフッ素ゴム、PTFE(テフロン)など耐薬品性の高い素材を使用します。接触面を清掃し、均一に挟み、締付トルクを管理することで漏れ防止が可能です。

手順6:配管・フランジ接続

排ガス導入管、洗浄液供給管、排液管を接続。PVCフランジで密閉を確認し漏れ防止。

手順7:圧力・気密試験

完成後、内部圧力試験で漏れをチェック。

手順8:運転前の洗浄・調整

初期運転前に洗浄液で内部洗浄。ノズルやパッキング材に異物がないか確認し、液量・ガス流量を調整。

手順9:本運転・保守管理

運転開始後も定期的に洗浄液補充、パッキング材の目詰まりやPVC表面の劣化を点検。

5. パッキング材とパッキン材の違いまとめ

項目 パッキング材 パッキン材
目的 ガスと洗浄液の接触効率向上(吸収効率UP) 接合部の密封(ガス・液体漏れ防止)
設置場所 塔内部(充填層) フランジ、蓋、配管接続部
材質例 PVC、PP、PE、FRP、ステンレス EPDM、フッ素ゴム、PTFE(テフロン)
交換頻度 目詰まり時や損傷時 硬化・変形時や定期点検時

6. 施工上の注意点

  • 強酸性・アルカリ性排ガスに対応する耐薬品性確認。
  • パッキング材の配置と密度を適切に設置。
  • パッキン材の締付・密封を確認し漏れ防止。
  • 塩ビは熱に弱いため高温ガスはFRPやステンレスを検討。
  • 施工現場では安全対策を徹底。

7. 実務施工例

化学プラントではPVC製スクラバーを設置し、硫黄酸化物や塩化水素を除去。施工期間は3日間で完了し、運転後の測定で規制値以下に排ガス濃度を低減。施工のポイントはパッキング材の密度調整とノズル配置最適化、パッキン材の確実な締付と溶接・接着施工でした。

8. メンテナンスと耐久性

  • 定期的にパッキング材の目詰まり確認。
  • パッキン材は硬化・変形をチェックし必要に応じて交換。
  • 洗浄液は汚染に応じて交換。
  • 塩ビ表面の亀裂や劣化は早期補修。
  • 適切な点検で10年以上運用可能。

9. FAQ(よくある質問)

Q1:塩ビ洗浄塔で高温ガスは処理できますか?

A:塩ビは熱に弱く、60℃以上のガスは不向き。高温時はFRPやステンレス製を検討。

Q2:塩ビ洗浄塔の寿命は?

A:運転条件により異なるが、適切なメンテナンスで10年以上可能。

Q3:施工時に資格は必要ですか?

A:専門技能があると安心ですが必須資格はなし。安全管理を最優先。

まとめ

酸に強い塩ビ製排ガス洗浄塔は、耐薬品性、施工性、コスト効率に優れ、産業廃棄ガスの除去に最適です。パッキング材とパッキン材の役割を理解し、適切に設置・施工することで、効率と安全性を両立できます。溶接・接着の難しいポイントも確認し、施工前にテストを行うことで長期運用が可能です。